【パートナーインタビュー】想いを形にするために。GARANと紡ぐ工房、“空間づくりのチーム”のかたち【株式会社GARAN/代々木】

株式会社GARAN
東京都渋谷区代々木 5-64-6 ファランドールビル 2F
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代々木公園の緑を望む場所にオフィスを構える空間設計事務所「GARAN(ガラン)」。飲食店やサロン、企業のオフィスを中心に、多岐にわたる業種の内装設計やコンサルティングを手がけています。これまでに「紡ぐ工房」とも互いの強みを活かし、多数のプロジェクトを共にした、心強いパートナーです。

今回は代表・加覧晴香さんに、事業の原点や空間づくりへの想いを伺いました。


もくじ


1. ひとつの“贈りもの”から始まった、空間設計の原点

──GARANではどのような事業を展開されていますか?

GARANは、内装設計を主業務とする設計事務所です。飲食店、物販店、ジム、サロン、オフィスなど、業種を問わず多岐にわたる商業空間を手がけていて、用途や規模にかかわらず、空間全体を最適化する設計提案を行っています。

──事業の原点について教えてください。

学生時代、友人の誕生日に「自分の手でつくったもの」をプレゼントするのが好きでした。ただ既製品を渡すのではなく、自分で形にしたものを贈って、その反応を見るのが何より嬉しかったんです。

振り返ってみると、それが“空間づくり”の原点だったと思います。何かをつくって、誰かが喜んでくれる――それを仕事にできたら素敵だなと思ったのが、最初のきっかけでした。

2. 設計という仕事に出会うまでの道のり

──そこから空間設計の世界にはどのように?

最初に惹かれたのは、ディズニーランドのアトラクションの「待ち時間」にある仕掛けでした。誰かに見られるかもわからない場所にも世界観が作り込まれていて、「空間で人を楽しませる」って、すごいなと。

そこから専門的な学校に進み、立体や空間など基礎的なことからを学びました。最初は飲食や物販の仕事をするイメージはなくて、もっと“テーマパーク的”な世界観への憧れのほうが強かったです。学校を卒業した後は、大手の設計・施工会社に入りました。

3. 「価値観を壊す」海外生活の経験

──会社員時代に転機となることがあったそうですね。

「まずは一人前になりたい」という気持ちで、最初の数年間は、与えられた仕事はすべて引き受けていました。とにかく現場に出て、経験を積むことに集中していたんです。

そんなある日、海外のクライアントとのプロジェクトに関わることがありました。
がむしゃらにやってきたぶん、それなりにいろんなことができるようになっていた時期だったんですが……英語がまったくできなくて、打ち合わせの議事録も取れず、本当に悔しかったんです。

そのとき、信頼していた上司に言われたんです。
「物事をいろんな角度から見ることが大事だよ。今すごい悔しいんでしょ?じゃあ明日からでも海外行ってこいよ」って。笑

さらにこう続けてくれました。
「空間をつくるってことは、いろんな角度から見ることが必要だから。自分の価値観を超えたもので見ることが、一番簡単にできるのは日本じゃなくて海外。今までの価値観を崩すことだよ」って。

その言葉がずっと心に残っていて、思いきって海外(オーストラリア)に行くことを決めました。
その時は20代の前半。
語学力ゼロからのスタートで、仕事を続けながらダブルワークでお金を貯めて、半年ほど準備をして渡航しました。オーストラリアには一年ほど滞在してさまざまなことを経験しました。

異文化の中で過ごした経験は、いまでも空間づくりに対する視野や考え方に大きな影響を与えてくれています。

4. GARAN設立と、代々木公園前のオフィス

──帰国後はすぐに独立されたのですか?

いえ、最初は実家に住みながら、会社員時代のご縁で少しずつ仕事をいただいていました。お金をいただくというより、「経験を積ませてほしい」というスタンスでしたね。

結果的に、フリーランスとして10年ほど活動しました。その間ずっと一人でやっていたのですが、30代になって「このままずっと一人で続けるのは、なんだか違うかもしれない」と思い始めて。そこで法人化して、代々木公園の前に事務所を構えることにしたんです。

当初の予算をオーバーしていたのですが、内見でこの場所を見た瞬間「ここにしよう」と即決しました。広さにも余裕があったので、「もしかしたら誰かと一緒に働く未来があるかもしれない」と思えたことも大きかったです。

今ではスタッフも増え、チームとして案件に取り組めるようになりました。個々の得意分野を活かしながら、より多様な案件に挑戦しています。

5. 紡ぐ工房との共同プロジェクト

──紡ぐ工房との出会いについても教えてください。

紡ぐ工房の代表である矢野さんがまだ独立される前のことですね。あるプロジェクトで、現場にいた矢野さんと初めてお会いして、そこから何件かの案件をご一緒するようになりました。確かビル一棟をリノベーションするという内容だったと思います。

当時は私もまだ個人事業主で、設計外注という形でしたが、何となく「この人とは気が合いそうだな」と感じていました。

その後、紡ぐ工房さんと一緒に設計や施工を進める機会が増えたことで、お互いの仕事のスタイルや考え方も、より深く理解できるようになっていきました。現在はオフィスに入れる家具や什器の制作を依頼しています。

6. 何が最善なのかを考える。家具と素材に見る柔軟な提案力

──紡ぐ工房と仕事をするうえで、印象的なことはありますか?

設計者として「こうしたい」というこだわりはもちろんあるんですが、やっぱり予算とのバランスもあるじゃないですか。

その点で、矢野さんたちはすごく柔軟なんです。たとえば、「ここはコストを抑えてもいいのでは?」と現実的な視点でアドバイスしてくれたり、「この加工なら見た目は同じでも、もっと素材の表情が活きるかもしれないよ」といった、クオリティ面での提案もしてくれる。

大きな家具や特殊な素材でも、ただ「高いか安いか」ではなく、「どうすれば実現できるか」を一緒に考えてくれる。そういう姿勢は、すごくありがたいですね。

──紡ぐ工房がモルタル製品を作るきっかけを与えたのも、GARANさんだったとお聞きしました。

そうなんです。
当時、私のプロジェクトで「モールテックスのような仕上げにしたい」という話をしていたときに、父(※特殊塗装を専門とする塗装会社の代表)から「実はモールテックスじゃなくても、似た質感は再現できるよ」とサンプルを見せてもらったことがありました。

そのサンプルを紡ぐ工房の矢野さんにお見せしたところ、「これならコストを抑えつつ、同じような仕上がりが目指せる」と興味を持ってくださって。そこから、紡ぐ工房さんでもモルタル素材を使った製作に取り組むようになったんです。

「指定の高価な材料でなければならない」という前提を手放して、目的に応じて素材や技法を柔軟に選んでいく。そんな風に進められるのは、矢野さんたちの探究心と懐の深さがあってこそだと思います。

7. 空間づくりは、信頼と対話から生まれる

──GARANが考える「良い空間づくり」とは、どんなものですか?

デザインの正解って、結局は“その空間で誰がどう過ごすか”に尽きると思うんです。だからこそ、ヒアリングや対話をとても大切にしています。

そして、自分の考えを押しつけるのではなく、相手の価値観や要望にちゃんと寄り添うこと。クライアントも、施工パートナーも、同じ目線で一緒に「いいものをつくる」チームでありたいですね。

 8. 編集後記

「空間を贈る」という感覚。加覧さんの言葉には、やさしさと思いやり、そして揺るぎない信念が感じられました。

“誰かのために、自分の手でつくる”。その原点からはじまり、海外での経験、長年のフリーランス期間、会社の立ち上げ、仲間との出会いと拡がり──。
GARANが手がける空間には、対話から生まれる丁寧な設計と、「人に寄り添う」誠実なまなざしが宿っています。

代々木公園の緑が広がる事務所から、今日もまた、新たな空間という“贈りもの”が静かにかたちづくられていきます。

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