分業制に革命を。顧客と職人の両方を幸せにする工務店の挑戦

これまで私たち紡ぐ工房では、空間づくりをご一緒した施主の皆さまにお話を伺い、そのストーリーをご紹介してきました。今回は少し視点を変えて、私たち自身――紡ぐ工房を運営する代表・矢野功治に焦点を当ててみたいと思います。
中学卒業後すぐに大工の道へ入り、ゼネコン勤務、リノベーション、家具製作と、ものづくりの現場で経験を積んだ矢野。現在は、店舗や一般住宅の新築・リノベーションに関わる設計・施工をはじめ、什器や家具づくりまで一貫して担う体制を築き、職人が多様な技術を学びながら成長できる現場づくりにも力を注いでいます。
今回は、ビジネス情報誌「カンパニータンク」でのインタビューから一部を抜粋したものを再構成してご紹介します。ゲストインタビュアーとして女優の宮地真緒さんをお迎えし、代表の想いや価値観に迫った内容です。
ぜひご一読ください。
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【COMPANY TANK】設計から施工まで一貫対応 職人の常識を覆す精鋭部隊【Special Interview】
職人としての原点と、学びの日々
── 矢野さんのご経歴についてお聞かせください。
私は中学卒業と同時に、地元・広島で大工の道に入りました。10代の頃から「自分の力で生きていく」という強い意志があり、早くから現場に出て仕事を覚える道を選びました。
18歳になると、定時制高校と建築系の専門学校の夜間課程に通い始め、昼は現場、夜は学びという二重生活を送りながら、建築士の資格を取得しました。
朝5時に現場に出て、夜は学校。それが終わったあとにはサッカー部にも顔を出していたので、帰宅は深夜になることも多々ありました。でも、つらいという気持ちはなかったですね。日々が充実していたし、現場と学びの両方にやりがいを感じていました。
上京とゼネコン勤務──“歯車”では終われなかった理由
── 東京へはどのような経緯で?
20代半ば、自分の可能性をもっと広げたいという気持ちが芽生えました。地方での経験だけで満足するのではなく、よりスケールの大きな仕事や、さまざまな価値観に触れてみたかったんです。そうして26歳で上京し、ゼネコンに就職しました。
ただ、入ってみて感じたのは、大企業ならではの分業体制の中で、自分が「現場の一部分」しか担当できないというもどかしさでした。設計、施工、家具、空間演出までトータルで手がけたい自分の理想とは少し距離があったんです。
それで、自分の理想と現実のギャップを埋めるには、独立して自分の手で理想の環境をつくるしかないと考えるようになりました。
一貫対応に込めた思いと強み
── 現在はどのような業務を行っていますか?
住宅の新築・リフォーム・リノベーションから、店舗やオフィスの内装工事、さらにはオーダー家具の製作まで幅広く手がけています。私たちの強みは、それらすべてを自社内で一貫して担える体制を整えていることです。
特に力を入れているのが店舗づくり。物件探しの段階から施主と伴走し、立地特性や予算、将来的な展開を踏まえたうえで、「この場所なら、こういう空間が向いています」といった企画提案から携わっています。
単なる施工業者というより、空間づくりのパートナーでありたいという意識を常に持っています。
現場を支える、マルチスキル職人の育成
── マルチスキルをもつ職人の育成にも力を入れているとのことですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
一番のメリットは、お客様にも私たちにも「無駄がない」ことです。
一般的な現場では、工種ごとに職人が入れ替わり立ち替わり作業を行う分業制が主流です。けれどもそれでは、左官工事が2時間で終わっても「1人工分」のコストがかかるといったことが起こりがちです。
当社では、一人ひとりの職人が複数の技術を習得しており、工程間の“隙間”を自分たちで埋められるため、工程の効率化・コストの圧縮につながります。これは施工スピードや品質の安定性にも直結しますし、結果としてお客様にも大きなメリットになると思っています。
正直、料金面で他社さんに後れを取ったことはありません。
地域に開かれたアットホームな工房へ
── 今後の展望を教えてください。
おかげさまで現在は半年先までスケジュールが埋まっており、多くのお客様に信頼いただいています。
今後は人材育成と働き方の多様化をさらに進めていきたいです。
たとえば、家具製作のノウハウを活かして、廃材をリユースした雑貨や文具などのプロダクトラインも検討中です。これは、力仕事から少し距離を置いた働き方を希望するスタッフや、定年後の職人が活躍できる場所をつくるためでもあります。
また、DIYや空間演出に関心のある一般の方にも開かれた、ものづくりの体験拠点のような工房をつくりたいという構想もあります。
「できません」と言わず応えるために
── 工房にはお客様も来られるそうですね?
はい。実際に「壁を一緒に塗ってみたい」「手形を残したい」といったお客様がいらっしゃって、私たちも大歓迎です。
現場というのは、ただ完成品を引き渡すだけの場所ではなく、施主さんにとって「思い出が宿る場」にもなると思っているので、できる限りそのプロセスを共有したいと考えています。
── “何でもやる”姿勢が原動力のように感じます。
「できません」とは言いたくないんです。もちろん無理なことはありますが、まずは「どうすれば実現できるか」を考えることから逃げたくない。
だからこそ、自分自身も、仲間の職人も、少しずつできる領域を広げてきました。
環境整備にも力を入れています。工房は広く、保管庫は使いやすく美しく、職人がのびのびと働ける空間であるように意識しています。仕事は過酷になりがちだからこそ、気持ちよく向き合える場所が必要だと感じているんです。
完成後もつながり続ける存在として
── 施工後も施主さんとのお付き合いは続いているそうですね。
そうですね。お店や住宅を納品した後も定期的に足を運ぶようにしています。「こんな棚をつけたらどうですか?」「別注の家具も考えましょうか」と提案することもあります。
空間づくりって、「完成したら終わり」ではないと思うんです。
特に新築の場合は、“その空間と共に時間を重ねていく”お客様の人生に関わるわけですから、一生のお付き合いのつもりで向き合っています。
若手が憧れる職人像をつくるという目標
── 最後に、事業を通じて叶えたいことは?
職人の地位を、もっと社会的に評価されるものにしたいと思っています。
今の建設業界は、スキルがあっても給与に反映されにくい仕組みが残っていて、若い世代が将来像を描きづらい。だから当社では、成果に応じてしっかり評価される報酬体系を整えています。
「YouTuberになりたい」という夢と同じくらい、「家具職人になりたい」と言われる仕事にしていきたい。そのために、“カッコいい働き方”“誇れる仕事”を実現し続けたいと思っています。
過去の施工実績の一部をご紹介
編集後記
いかがでしたでしょうか。今回の記事を通して、紡ぐ工房の考え方や取り組みの背景を少しでも感じていただけたなら幸いです。
今後は、施工事例や店舗づくりに役立つ情報なども積極的にご紹介していく予定です。これから店舗の開業を検討されている方や、空間づくりに興味のある方にとって、参考になるコンテンツを目指してまいります。引き続き、紡ぐ工房の取り組みにご注目いただければ嬉しいです。
※記事全文はこちらからご覧いただけます:
【COMPANY TANK】設計から施工まで一貫対応 職人の常識を覆す精鋭部隊【Special Interview】